阪本司法書士事務所 平成30年5月

【今月のテーマ:『120年ぶりの民法大改正について(その3

 

3月号より、今般民法が大幅に改正され、平成32年(2020年)4月1日(一部の規定を除く)より施行されることをお知らせしました。

今号では、この改正民法の大きな柱の一つである「保証人の保護に関する改正」について、重要なポイントに絞ってご紹介します。

保証契約に関するルールについて、個人(会社などの法人は含まれません)が保証人になる場合の保証人の保護を進めるため、次のような改正をしています。

(1)極度額の定めのない個人の根保証契約※1は無効に

個人が根保証契約を締結する場合には、保証人が支払の責任を負う金額の上限となる「極度額」を定めなければ、保証契約は無効となります。

※1  一定の範囲に属する不特定の債務を保証する契約を「根保証契約」といいます。例えば、住宅等の賃貸借契約の保証人となる契約などが根保証契約に当たることがあります。

(2)公証人による保証意思確認の手順を新設

会社や個人である事業主が融資を受ける場合に、その事業に関与していない親戚や友人などの第三者が容易に保証人になってしまい、結果的に、予想もしなかった多額の支払を迫られるという事態が依然として生じています。そこで、個人が事業用融資の保証人になろうとする場合について、公証人による保証意思確認の手続(保証人になろうとする者は自ら公証人の面前で保証意思を述べ、公証人が「保証意思宣明公正証書」を作成する)を新設しています。この手続を経ないでした保証契約は無効となります※2

※2 次の場合には、意思確認は不要です。

①主債務者が法人である場合…

その法人の理事、取締役、執行役、議決権の過半数を有する株主等

②主債務者が個人である場合…

主債務者と共同して事業を行っている共同事業者や、主債務者の事業に現に従事している主債務者の配 偶者

所長の一言 平成30年5月

 

シリーズ「法人と個人」:第3回 法人の資本金 ≒ 個人の元入金

 

財務諸表のひとつ貸借対照表は、資産と負債と純資産で構成されています(下図参照)。

「貸借対照表 画像」の画像検索結果 左の資産から右上の負債をマイナスして、資本金を上回っていれば、累積黒字があり、反対に、資本金を下回っていれば、累積赤字が発生していることが分かります。法人は貸借対照表から現時点の会社の価値を把握することが可能です。

では、個人事業でも同じように、累積黒字があるのか、累積赤字があるのか、貸借対照表を見ただけで判断できると思われますか?

 

個人事業主にも「元入金」という勘定が存在します。かつて簿記の勉強をしたとき、法人の資本金=個人の元入金と覚えた記憶があります。実際は、元入金は資本金とは似て非なるものだと考えられます。個人の元入金は、第2回でご紹介した事業主借・事業主貸勘定と、事業所得とをブレンドしたものであるからです。例えば、事業で資金が不足し、事業主から資金の投入があった場合、

 

期中 現金100 /事業主借100  決算時 事業主借100 /元入金100

 

となり、元入金が増加して翌期に繰り越されるため、事業での純粋な内部留保を反映しているとはいえません。

個人は、事業の価値を元入金に求めるのではなく、資産と負債のバランスや資産の構成内容などを中心に貸借対照表を見て判断するのがベストではないかと、私は考えます。

それから6月1日より『まちゼミ』が開催されます。弊社も参加します。魅力ある講座が目白押しですので、皆様もご参加いただければ幸いです。

阪本司法書士事務所 平成30年4月

【今月のテーマ:『法人が目的外の事業をするとどうなる?

権利や義務の主体となるのは「自然人」と「法人」があります。当然ですが、法人が自然人とまったく同じ権利能力を持っているわけではありません。法人にはその性質や法令上で制限がありますし、さらに民法34条に「(法人は)目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う」とあるように、”目的の範囲内”という制約があります。

法人を設立するときには、必ず定款でその法人が行う事業の目的を定め、登記をしますが、気になるのは定款に記載された目的以外の事業や活動はできないのか(無効になるのか)ということや、目的以外の事業を行った場合に罰則はあるのか、といった疑問ではないでしょうか。

この点、事業目的以外の取引を行った場合に、法人側から取引の無効を主張することが出来ないのはもちろん、取引の相手方から無効を主張することも認められていません。また、法人は事業目的に記載されていない事業を営めないことになっているものの、会社法等による罰則規定というものは特にありません。

専門家によって判断が分かれますが、定款に書かれた事業目的ではなくても「目的の達成に必要な行為」、あるいは「目的の達成に有用な行為」を含むとして、目的の範囲について、拡大解釈することができるとされています。

たとえば、英会話教室を営む企業の事業所の敷地内に自販機を設置して、清涼飲料水を販売している場合、「飲料の販売」を事業目的に記載していなくても問題にはなりません。「目的の達成に必要な行為」や「目的の達成に有用な行為」に、清涼飲料水を販売している行為が含まれると考えられるからです。

ただし、自販機による飲料の販売が利益の大半を占めている場合には、定款に事業目的のひとつとして記載する必要性も出てきます。

というのも、定款・登記簿に記載されている事業目的と全く関連性のない事業を、反復・継続的に営んでいると、その事業のために費やした経費が税務署に認めてもらえない等のリスクがあるからです。

個人事業主の方は、法令や公序良俗に反しない事業であれば、自由に営むことが出来るのですが、法人の場合は、事業内容が「目的の範囲内」でない場合は、「目的変更登記」をしないといけませんので、ご注意下さい。

所長の一言 平成30年4月

シリーズ「法人と個人」:第2回 オーナー貸付金・借入金の相違「マイクロソフト クリップアートシルエット」の画像検索結果

 

前回に引き続き、法人と個人との違いをお話しします。(特に明記がない限り、有限会社・株式会社といった法人格を前提として話を進めます。)

事業上の資金を、経営者(その同族者も含む)が個人的に持ち出した場合、法人の場合は役員貸付金等の科目で資産勘定に計上されることになり、貸した人からお金を返済してもらうまで残っていきます。法人と経営者とは全く異なる人格だからです。また、その貸付金は無利息で貸し付けることができず(法人は営利を目的としており、無利息で資金提供はできないため)、利息が課せられることになります。

法人が資金不足の場合、経営者が資金を投入することもありますが、その場合は役員借入金等という形で負債勘定に計上され、返済されるまで残っていきます。これには利息を支払う必要はありません。

一方、個人の場合は、事業も個人の生活の延長と捉えられるため、事業上の資金を事業主が持っていったとしても、貸付金という概念はなく、単なる生活費の持ち出しと考え、事業主貸勘定という仮の勘定にて事業年度中は処理されます。

事業で資金不足が起きた場合、事業主が資金を投入した場合も同様で、借入金という捉え方をせず、事業主が資金を入れてくれましたという仮の勘定、事業主借勘定にて処理されます。

同じ経営者からの資金提供でも、法人と個人とでは大きく処理方法が異なります。

注意点としまして、個人事業で事業主以外から資金提供があった場合、貸してくれた人からの借入金として処理することが必要です。資金の出どころを明らかにしないと、事業主勘定で処理されてしまうため、贈与の問題や、相続が発生した場合に相続税の問題で後々大きな影響を及ぼすことも考えられるため、大きな資金が動いた場合には、必ず出どころをはっきりさせ、通帳のコピー等の信憑書類を残しておくことが大切となってきます。

 

阪本司法書士事務所 平成30年3月

【今月のテーマ:『120年ぶりの民法大改正について(その2 

前号で、今般民法が大幅に改正され、平成32年(2020年)4月1日(一部の規定を除く)より施行されることをお知らせしました。

今号では、この改正民法の大きな柱の一つである「消滅時効」について、重要なポイントに絞ってご紹介します。消滅時効は、債権を扱うあらゆる個人ないし企業が関与する身近な問題ですし、この制度は、一定期間の経過によって権利自体が消滅する効果があるため、いざという時に極めて大きな影響力を持つものです。日頃は特に意識されていない方がほとんどだと思いますが、是非この機会に少しでもご興味を持って頂ければと思います。

そもそも「消滅時効」とは、権利が一定期間行使されない場合、その権利を消滅させる制度をいいます。存在していたはずの権利を認めないことは、一見不合理のようにも思われますが、長年続いた事実状態の尊重・錯綜防止の観点から制定されたルールです。

さて、改正民法では、『債権は、債権者が権利を行使することができることを知った日から5年間行使しないとき、又は、権利を行使することができる時から10年間行使しないときは、時効によって消滅する。』と定められました。

債権者は、多くの場合、権利を行使することができるときにそのことを知ったと言えるので、今後は、原則的に債権の消滅時効期間は5年になることが考えられます。現行法では「一般的な債権の消滅時効といえば10年」のイメージが強いと思いますが、その半分の期間で時効消滅することになるので注意を要します。

ただし、会社の業務上の債権はこれまでも商法522条により5年だったので、ここは変わりありません。

改正民法の施行後は、従来通り『10年経過するまでは債権が存続する』と誤信していると、多大な時間や労力をかけ取得した債権額がゼロになってしまい、大打撃を被る事態が起こりえます。そのようなリスクを負わないためにも、時効の起算点と時効期間を確認し、債権管理を見直すことが大切です。

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