所長の一言 平成30年8月

シリーズ「法人と個人」:第6回(最終回) 個人と法人の経理処理の相違

   残暑お見舞い申し上げます。

過ごしやすい日が増えてきましたが、今年は猛暑日が続き、気象庁からは残暑が9月末まで続くとの予報も発表されました。まだまだ暑い日が続きそうですので、皆様体調の管理には十分お気を付けください。

さて、今回は法人と個人の経理処理の大きな違いについてお話します。

まずは、違いの大きなものから3つ表にしてみました(私の個人的なベスト3です)。

相違点ベスト3

法人

個人

1位 経営者への給与 支払うことができる 支払うことができない
2位 繰越欠損金 10年間引き継げる 3年間引き継げる
3位 社会保険加入 加入義務あり 5名未満は加入義務なし

【解説】

まず、第1位の経営者への給与ですが、会社の経営者への給与の支払は役員報酬という形で支払うことができます。一方個人事業主は、事業主本人には給与を支払うことができません。個人事業者が法人形態に組織変更する、いわゆる法人成りという方法は、事業主に対し役員報酬を支払うことにより、節税効果を高めるために行なうことが大きな目的と言えます。

第2位の繰越欠損金の引継期間の違いは、共に青色申告の届出を提出していることが条件ですが、平成30年4月1日以後から営業が始まる法人の場合は、その営業年度に出た損失額を10年間引き継ぐことができます。一方、個人事業者の場合は損失額を3年間引き継げますが、3年経過するとその欠損金は消滅してしまいます。

第3位は、社会保険の加入義務についての違いをを挙げてみました。

その他にも多くの相違点がありますが、それぞれできることできないことを知っておいていただくとより戦略的な経営が行えますので、ご興味を持っていただけたら幸いです。

全6回にわたりお話してきました『シリーズ法人と個人』は今回で一旦終了致します。またの機会に関連することなど、お話できればと考えています。

阪本司法書士事務所 平成30年7月

【今月のテーマ:『120年ぶりの民法大改正について(その5

3月号より、今般民法が大幅に改正され、平成32年(2020年)4月1日(一部の規定を除く)より施行されることをお知らせしてまいりました。

この改正民法による新制度に『定型約款』というものがあります。前号では約款の意義と問題点についてご説明しましたので、今号では「定型約款」とは何か、重要なポイントに絞ってご紹介します。

 「定型約款」とは

「定型約款」とは、約款(利用規約)のうち、以下の①~③の要件全てに当てはまるものをいいます。

①ある特定の者が、不特定多数の者を相手方として行う取引についてのものであること(要件その1:不特定多数)

②取引の内容の全部または一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものであること(要件その2:定型取引)

③約款が、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体であること(要件その3:一方性)

何のことだかよく分からないと思いますが、具体例としては、「インターネット上で提供されるサービスについての利用規約」、「保険会社が定める保険約款」、「運送会社が定める運送約款」、「宿泊施設が定める宿泊約款」、「ソフトウェア販売会社が定めるソフトウェアの利用約款」といったものが定型約款に当てはまるそうです。

ですから、不特定多数の者を相手にしないものだったり、当事者間で個別的にその条項を検討するようなことが予定されたりするものは、「定型約款」には該当しません。

約款(利用規約)が「定型約款」にあてはまる場合、約款を準備する事業者側は、様々な規制をうけることになりますので注意が必要です。規制のポイントをまとめると以下の3つとなります。

  1. ユーザーに約款(利用規約)を明確に表示すること
  2. 約款(利用規約)に不利益条項が含まれていないこと
  3. 約款(利用規約)の変更要件・手続きに細かな条件が定められたこと

このルールを知らずにこれまでと同様の約款を使い続けていると、思わぬ落とし穴があるかもしれません。

約款を利用している事業者の方は、改正民法の規定を踏まえ、実務の準備を始めておかれると良いかと思います。

所長の一言 平成30年7月

先日の大雨で、飛騨地方でも被害が出て、地滑りにより一時的に通行止めになる地域、家屋が壊れてしまう地域がありました。他県では残念なことに多くの犠牲者が出てしまい、自然の怖ろしさを感じる日々でありました。

お亡くなりになられた方々のご冥福を心よりお祈りするとともに、一日も早い復興を願うばかりです。

シリーズ「法人と個人」:第5回 事業承継 法人編「クリップアート シルエット リレー」の画像検索結果

 

さて、前回は『事業承継』(お子様や次世代の方に、経営を移譲すること)の個人事業主の場合についてお話させていただきましたが、今回は法人が事業承継する場合についてお話させていただきます。

法人の場合は、会社の経営面での承継、会社の所有面での承継の2つの承継があることに留意しなければいけません。

経営面での承継を考えると、会社の経営を後継者が引き継ぐ場合には、代表取締役を変更することで比較的簡単に経営移譲することができます。資産等もそのままの状態で引き継ぐので、銀行の口座等も名義の変更が必要ですが、そのまま引き継ぐことが可能です。

所有面での承継を考えると、法人の場合、株主資本という概念があるため、株式や出資金を内部留保を含めた価額で再評価しなければいけません。一般的な中小企業は経営者 = 株主で、前経営者の経営成績が良かった場合、会社の価値が高く、その分設立時出資した株式や出資金の価値が高くなっているので、安易に後継者に株式まで移譲してしまうと、贈与の対象となり、贈与税がかけられるため、細心の注意が必要となります。

また、後継者が不在の場合、まったくの第三者に事業を移譲する、M&A(Mergers and Acquisitionsの略(合併と買収という意味))という形の事業承継も存在します。

弊社としても、『事業承継』について、最適なアドバイスができるよう努めますので、諸々ご相談いただければ幸いかと存じます。

阪本司法書士事務所 平成30年6月

【今月のテーマ:『120年ぶりの民法大改正について(その4 

  3月号より、今般民法が大幅に改正され、平成32年(2020年)4月1日(一部の規定を除く)より施行されることをお知らせしました。今号では、この改正民法の柱のひとつである『定型約款』という新制度について、ご紹介します。

約款の意義と問題点

約款とは、あらかじめ定められた画一的な約款の条項に契約としての拘束力を認めるものです。例えば、電気・ガス・運送(バスや電車・汽車等)・旅行・宅配便・保険・クレジットカード・預金・携帯電話…等々、現代社会では様々な取引の場面において知らず知らずのうちに『約款』が利用されているのです。

しかし、約款は非常に多条項に渡っていることが多いため、契約前に約款をきちんと読んで、内容を把握してから契約するという人は、ほとんどいないのではないでしょうか。ちなみに、私自身も見ていないことが多いです。それにもかかわらず、約款が作成されているというだけで常にそれに拘束されてしまっていいのか、また、約款の条項に記載されていることはどんな内容でも効力があるとしてしまっていいのか、などの問題があります。

実際に、この問題に関して、携帯電話会社を相手として、会社が約款の内容を変更することがあるとし、料金その他の提供条件は変更後のものが適用されるなどとする約款の条項について、一方的に契約内容を変更できるとするのは無効であるなどと争われている事件があります。

約款は、その条項を確認しながら個別的にその内容を交渉することはなく、大量の取引を合理的・効率的に行えるため、現代社会では必要不可欠ではありますが、色々な問題を抱えています。従来の法律ではその規定が全くなかったことから、民法において一定のルールを定めようということになり、今回の民法改正で「定型約款」の条文が新設されることになったのです。

次号では、改正民法で新しく定められることになった「定型約款」とは何か、について、ご説明いたします。

所長の一言 平成30年6月

シリーズ「法人と個人」:第4回 事業承継 個人事業主編「クリップアート シルエット リレー」の画像検索結果

 

長年、事業を営まれてきた経営者も、年齢などの事情によりお子様や次世代の方に、経営を移譲することがあります。これを専門用語で『事業承継』といい、最近この案件は多くなってきております。事業承継にも、法人と個人では大きな違いがあります。今回はまず個人事業の事業承継についてお話したいと思います。

 <事例:Aさんが○○商店をBさんに事業承継する場合>

 非常に多い間違いとして、○○商店の代表を変更するだけでAからBに事業承継できると考える方が見受けられます。実際には事業の主体はあくまでAさんですので、Aさんの○○商店は廃業して、新たにBさんの○○商店を開業するという考え方が正しいです。ですので、例えばAさん名義の○○商店の通帳は、Bさんの事業では基本的に使用できません。同じ屋号は使えるので、Bさん名義の○○商店の通帳を新しく作り、取引先から入金してもらうよう手配しておかなければいけません。税務署等に対しても開廃業届の提出が必要であったり、特定の許可など取得されている場合には、その変更の手続きが必要となるので注意が必要です。

メリットとしては、事業が次世代に滞りなくバトンタッチすることができ、事業の若返りがアピールできること、前経営者の憂いが少なくなることでしょうか。副次的効果として、Aさんが消費税を納めている事業者だったとしたら、判定基準の1,000万円以上の課税売上はAさんで完結するので、Bさんは暫く消費税を納めなくても良い可能性が高く、結果的に節税になることが考えられます。

上記の件は、生前に事業承継した場合であり、死後に相続や遺贈として事業承継した場合には、事情が大きく変わります。特に消費税は注意が必要です。そのような観点から、生前に事業承継をしておいた方がメリットは多いといえます。

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