阪本司法書士事務所 令和3年11月

【今月のテーマ:「1人会社」の取締役兼株主が亡くなったら?】

 

平成18年5月に会社法が施行され、従来の株式会社の要件であった、取締役人数制限(最低3名以上)や最低資本金制度(1000万円以上)が廃止されたため、株式会社であっても「取締役1名(Aさん)、株主1名(Aさん)」のみ、という非常にシンプルな設計の株式会社が増えています。このような会社形態を俗に「1人会社」と呼びますが、ではその唯一の取締役兼株主Aさんが亡くなった場合の手続きは、どのような手順でしたらよいのでしょうか?

実務面でも、「1人会社」の相続に関連した手続きは、今後どんどん増えてくると思われますので、一般例を少しご紹介したいと思います。

 

まず、「取締役の地位」は相続の対象とはなり得ず、相続人が当然に取締役となることはありませんので、速やかに株主総会を開催して後任取締役を選任し、登記申請する必要がありますが、株主総会を開催する前に、まずはAさんの株式を誰が相続するのかを決めた方が良いでしょう。といいますのは、株式は相続人が複数いる場合は準共有状態となります。準共有状態というのは少々分かりにくいのですが、具体例で説明しますと、Aさんが100株持っていて、相続人が2名の場合、相続人2名は100株の株式全部を持分2分の1の割合で共同所有している状態です。この場合、代表者を決めて会社に通知し、代表者が議決権等の行使をするか、相続人全員が共同して株主総会で議決権を行使することにつき会社の同意を得るか、いずれかの手続きが必要で面倒な事になります。この準共有状態を解消するためには、遺産分割協議を行わないといけません。

 

遺産分割協議がまとまって、株主が誰になるか決まった後、次にやらなきゃいけないのが株主総会を開催し、取締役を選任することですが、株主総会を招集する取締役がいないのですから、どうやって開催したら良いのか疑問ですよね。

この点については、株主総会を招集する権限があるのは原則として取締役ですが、

株主全員の同意があれば、招集の手続を経ることなく株主総会を開催することが可能。

②株主が株主総会の目的事項を提案し、株主全員が書面等で同意した時は、その提案を可決した株主総会決議があったとみなす、「株主総会決議の省略」が可能。

①又は②のやり方で株主総会が開催できますが、これには「株主全員の同意」が必要なため、同意しない株主がいる場合は、裁判所が関与する手続きをせざるを得なくなります。

 

最近では、相続人それぞれが自己の権利を主張して話し合いがまとまらず、遺産分割協議が長引くケースが珍しくありませんし、「1人会社」の唯一の取締役兼株主Aさんが亡くなった場合、①株主が誰になるのかが決まらない→②株主総会を開催できない→③後任取締役を選任できない→④取締役不在で会社経営に支障をきたす、ということになりかねません。Aさんは生前に株を贈与するなり、遺言書で株の取得者を決めておくなり、又は自分以外に誰か取締役を追加しておくなり、何らかの備えをして対策しておくことが重要かと思います。

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